鉄道廃線、捨てたもんじゃない? 観光ツアー人気、道路にも

(2017年11月5日午後5時10分)
旧北陸線をたどるツアーを楽しむ参加者=2016年7月、福井県敦賀市樫曲の旧北陸線樫曲トンネル
 2023年春の福井県内延伸へ向け、北陸新幹線のつち音が響く県内。一方で、惜しまれつつ廃線になった路線も多くある。鉄路として地図上から消えた路線の今をたどってみると、その場所は形を変えながらも生活に密着していることがうかがえる。廃線だからといって、捨てたもんじゃない。

 県内の廃線活用策として有名なのは、旧北陸線の今庄―敦賀間のトンネル群だ。15年に13件まとめて国登録有形文化財となり、観光資源としての価値が急上昇した。

 トンネルが多く残る県道今庄杉津線を歩くツアーを、旅行会社クラブツーリズムが関西・中京発で販売し人気を集めている。今年3月には南越前町が蒸気機関車D51を模したバスを導入、観光に活用されている。同町観光まちづくり課の大霜求己課長は「(旧北陸線の遺産が多く残る)敦賀市や滋賀県長浜市とともに広域観光開発できる可能性が高い。鉄道遺産をより感じられるよう周辺整備を進めたい」と話す。3市町は10月19日、鉄道遺産などを生かした広域観光を推進する連携協定を結び、協議会を設立した。

 県内の廃線はどれくらいあるのだろうか。福井大地域環境研究教育センターの研究紀要「日本海地域の自然と環境」03年版にある服部勇・同大教育地域科学部教授(当時)の記事「鉄道廃線跡」によると、その延長は100キロを超えるという。線路撤去後の跡地の運命は▽全く痕跡もなくなる▽放置され続ける▽一般道路として再利用▽住宅になる―の4通りあるとしている。

 県立歴史博物館の水村伸行学芸員は「ほとんどが道路に転用されたのではないか」と語る。直線とゆるやかなカーブで構成されるため走りやすいのが特長で、福井鉄道南越線、鯖浦線、京福電鉄越前本線の勝山―大野間など多くの廃線跡が、車や自転車、歩行者用の道となった。越前町の織田、西田中や坂井市の本丸岡といった駅は、バスターミナルに姿を変えて人々の足を支えている。

 えちぜん鉄道永平寺口駅から大本山永平寺門前までの約6キロ、幅約3メートルの旧京福電鉄永平寺線の廃線跡では、人工知能(AI)を搭載した自動運転車で路線をよみがえらせるプロジェクトが進む。現在は町が遊歩道としているが、電動カートが走れば観光、産業、地域の足の全てが振興できると期待値は高い。

 廃線の多さは福井の鉄道が発達していた証でもあるが、なぜこんなに多いのか。水村学芸員は、伝統工芸の産地と国鉄線を結ぶため、地域の有力者らが出資したことが一つの要因とする。南越線は和紙や漆器の産地をつなぎ、原材料や製品を取り扱ったとされる。戸ノ口駅跡(鯖江市)に建つ戸ノ口運輸の倉庫などに、鉄道貨物時代の面影が残っているという。

 ただ、水村学芸員は「福井は廃線の残し方が非常に中途半端」とみる。しかし、それを逆手に取り、古地図や関連書籍を片手に駅跡や高架台跡など、点在する遺産を巡るのも一つの廃線活用法という。「お薦め時期は、雑草が枯れてくる晩秋から初冬にかけて」(水村学芸員)。今が廃線巡りの「ハイシーズン」だ。